1. はじめに
2,4,6-トリクロロフェノール (2,4,6-TCP) は、殺菌剤や木材の防腐剤として世界中で大量に使用されている。クロロフェノール類は焼却灰やパルプ廃液等に存在し、アルカリ性で最も毒性の強い環境ホルモンであるダイオキシンに変換される前駆体であるため、世界的な環境汚染物質として問題となっている。本研究では、2,4,6-TCPを分解する土壌細菌Ralstonia pickettii DTP0602株の初発脱塩素反応に関わるHadBタンパクとFAD依存性を調べるために大腸菌中で高発現を試みた。
フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)は、様々な代謝反応に必要な酸化還元反応の補因子である。

2. 実験方法 
tacプロモーターをもつpTTQ18に組み込まれたhadBを高発現させ、菌体を破砕した後にイオン交換カラムを通した。非吸着画分にHadBが含まれていたが、FADの結合性を調べたが不明瞭であった。そこで、HadBタンパクを高発現させるためプライマーを設計し、PCR法により目的断片を増幅した。HadBを高発現ベクターpET41bにサブクローニングし、構築したプラスミドをE. coli BL21(DE3)に導入し、37℃で12時間培養した。この菌体をLB培地に20℃で20時間培養し、集菌、洗浄後、菌体を破砕し、SDS-PAGEにより確認した。
3. 実験結果及び考察 
Gibson Assemblyシステムによりクローニングした。hadB遺伝子とpET41bを連結し、タンパクの発現を確認した結果、約25 kDaにバンドが現れ、推定の分子量と一致した。HadBタンパクの高発現に成功した。現在、封入体として発現されていたため、培養温度とIPTGの量などを検討する必要がある。