1. はじめに

地球上の生物は自らを取り巻く様々な環境の影響を受けて、生命活動を続け進化を遂げてきた。光、温度、湿度、電界、気圧など、その影響が予想され観測が容易な物理パラメータについては多くの研究が行われてきた。生物は誕生から地磁気中に存在し磁界の影響を常に受けているが、その影響についてはあまり調べられていない。しかし、植物の発芽や成長の磁界影響に関する先行研究では、小麦種子が直流磁界を印加することにより苗の伸び率が100%の増加を示した報告がある。ダイコン種子も磁界印加することで発芽に変化をもたらす報告がある。しかし磁界の影響による発芽や成長に関するメカニズムの多くは明確にされていない。そこで我々は植物の磁界影響に着目し、温度、光、磁界がそれぞれ制御可能な発芽観測システムを構築し、磁界と発芽の関係についてしらべた。

2. 実験方法

培地にはカリウムイオンを含有する0.5%寒天培地を用い、種子を10個×3シャーレを2セット用意した。種子は小麦 (農林61号) を用いた。今回の研究では磁界方向に対する種子の角度による影響を調べてみた。(0度, 45度, 90度) 照明は波長が660nmの赤色LEDを用い、これを24.0℃に設定したインキュベーターの中にシャーレを入れ1時間毎に発芽した種子を数えた。印加磁界の制御にはヘルムホルツコイルを用いた。(交流磁界[7.4 μT ,10 kHz]) 印加磁界は鉛直方向に設定した。

3. 実験結果及び考察

小麦種子は磁界印加することで発芽を抑制する昨年の上原らの実験結果に対することの再現性が得られた。磁界方向に対して種子の角度を変えたところ有意な差が認められ、種子が磁界に対して90度にある場合はより強い影響を受けることが明らかとなった。