生体医工学科の一品
マイクロウェーブ試料分解装置
- 学生
- 先生、実験室にある電子レンジで弁当をあたためていいですか?
- 先生
いやいや、これはマイクロウェーブ試料分解装置といって元素測定の前処理をする装置だよ。大きさも電子レンジよりかなり大きいよ。中身は左の様に穴があいていて右の筒を入れるんですよ。
- 学生
- そのマイクロウェーブというのは普通の電子レンジとは違うのですか?
- 先生
- 原理は同じです。前処理というのは試料に酸を加えて、高温・高圧で固体試料を液体にするというものなんだけど、これで石でも液体にできるんです。
- 学生
- 液体にする装置ですか。原理が同じなら普通の電子レンジでもできますか?
- 先生
- 研究室にこの装置がなかった頃は、実際に普通の調理用電子レンジで前処理をしていたんです。ただし、酸が必要になりますけどね。
- 学生
- なら自分の家では無理ですね。ところで何のために液体にするのですか?
- 先生
元素を測定するためのICP-MSという装置が液体しか測定できないからです。
- 学生
- 液体ならどんなものでも測定できるのですか?
- 先生
- 濃度が高すぎるものはできません。例えば海水は塩分が濃すぎて測定できないので何倍にも薄めてからでないと測定できないのですよ。でも河川水位なら大丈夫です。
- 学生
- では反対にどれ位薄い濃度まで測定できるのですか?
- 先生
- このICP-MSは元素濃度が薄い方が得意で、ほとんどの元素でpptオーダーまで測定可能です。
- 学生
- pptというと分析化学などの講義でよく出てきますけど具体的にはどれくらいですか?
- 先生
pptは1兆分の1を表す割合の単位ですね。具体的には25mのプールに塩の結晶を数粒入れるとそれ位の濃度になります。
- 学生
- そんなに薄い濃度も測定できるんですか。
- 先生
- できますよ。この研究室では貝や海藻、それに髪や爪に含まれている元素の量で環境の状態や健康状態を調査しています。どうですか?この装置を使って微量の元素を測定してみませんか?
