生体医工学科の一品
人工腎臓と中空糸
- 学生
- 先生、今年もお中元にソーメン、もらったんですか?
- 先生
- ??
- 学生
- この細い白い束になっているやつです。
- 先生
- ええっ、これは中空糸(ちゅうくうし)だよ。
- 学生
- げっ、中空糸ですか。
- 先生
- 糸のように見えるけど、実は一本一本が中空になっていて、ストローとかマカロニを、ものすごーく細く引き伸ばしたような形になっているんだ。
- 学生
- (中空糸の端をのぞき込んで)穴が見えません。
- 先生
- ここに虫メガネがあるから、これで見てごらん。
- 学生
- うーん・・、なんとなく穴があいているような気もします。
- 先生
- この中空糸の太さは0.26mm、穴の直径は0.2mmくらいなんだ。人間の髪の毛より少し太いくらいかな。だから、虫メガネを使っても、目がいい人でないと中空の穴まではなかなか見えないんだ。
- 学生
- 中空糸って、人工腎臓に入っているんですよね。人工臓器の授業で習いました。
- 先生
- おおー、思い出してきましたね。ここに人工腎臓があるけど、この中には中空糸が1万本も入っているんだよ。
- 学生
- へえ、1万本。ギュウギュウ詰めですね。
- 先生
- ところで、人工腎臓について、他に覚えていることはあるかい。
- 学生
- 腎臓が悪い患者さんの血液からおしっこを出してあげるんですよね。
- 先生
- ピンポーン(古い!)。中空糸の中に患者さんの血液を流します。すると、中空糸の壁に小さな小さな細孔(小さなあな)がたくさんあって、その細孔を通っておしっこの成分の尿素とか水分が中空糸の外側に出て行くんだ。その中空糸の壁にあいている細孔の大きさは5nm(ナノメートル)くらいなんだ。5nmは0.000005mmだね。中空糸も細いけど、中空糸の壁にあいている細孔はずっと小さいんだね。電子顕微鏡でないと見えないくらい小さいんだ。
- 学生
- 中空糸ってすっごいですね。
- 先生
- そうだね。今、日本では29万人の腎不全の患者さんが、1週間に3回、この人工腎臓を使って血液透析という治療を受けながら生きているんだよ。
- 学生
- 私たちも勉強して、もっとすごい人工臓器をつくりたいです。
